マンション暮らしにとって理想の非常食とは?

今回は備蓄場所を含めた家庭における「非常食」とは?をテーマにまとめます。
賃貸マンションを管理する中で、住人さんとの防災イベントを通して実感したことであり、また実際に我が家で2016年から行っていることですので、参考にしていただければ幸いです。

前提条件:保管場所(備蓄スペース)に限りあり

マンションの専有部、住人さんの住戸の中に占める防災関連の置き場所について、私自身の経験で考えると、非常食や防災グッズを収納するスペースは「ごくわずか」または「ほとんどない」というのが実情です。

分譲マンションの場合、共有部に備蓄スペースを設けていたとしてもすべての住人が被災生活を過ごすために充分であるかどうか、その内容を把握している方がどれだけいらっしゃるでしょうか。さらに、避難所に行けば食料が備蓄されている、もしくは食料がすぐに配給されると思っているとすれば、それは大きな勘違いだとお伝えしておきます。

避難所の備蓄の状態や被災時の運営についての詳細は、他の記事でご説明するとして、自分で自分の身を守るための非常食。「マンション暮らしにとって理想の非常食」とはという本題に戻ります。

限られた家の中のスペースで、いかに非常食を備蓄するか

まず確認したいのが、備蓄場所(備蓄スペース)の問題です。
3日〜7日間分の食品×人数分を家庭備蓄「が望ましいといわれている」中、飲料水も含めた食料と災害用トイレやカセットコンロなどの調理器具、薬や避難用ヘルメットなどさまざまな防災グッズを限られたスペースに収納する必要があります。

過去の被災者の経験談で注意すべきは、被災後、救援物資が手に入る状態になったとしても、供給される食品の内容は選べないということです。
例えば、乳児のためのミルクや離乳食を避難所で配られるようになるまで、お子さんを待たせておくことが可能でしょうか? 糖尿病などの疾患で食べ物が制限されている人は、食べ物を選べなくなることで病状が悪化する可能性はありませんでしょうか? 歯が悪い人や治療中の方が食べられる柔らかいものを必ず配給してもらえるでしょうか? 復興がはじまり次第、コンビニで購入することが可能になるでしょうか?

つまり、3日〜7日間分という量の問題だけでなく、自分やご家族が食べている「常食」の食品備蓄が多ければ多いほど安心なのです。

液体ミルク

介護食品

「ローリングストック」が基本だが、それだけでは持続的ではない

ネットで検索を続けていると、「ローリングストック(ローリング備蓄)」という言葉に出会います。

ローリングストック … 普段の買い置きを多めにしておこうという考え方。

消費する ⇒ 追加購入 ⇒ 消費 の好循環の習慣を続けるという提案です。
ペットボトルの飲料水は、この方法に馴染むと思います。
ただし、検索結果のいくつかの記事だけを参考にするのは「持続的」ではありません。
たとえば、日清食品がサービスしている「”もしも”に備える新防災サービス カップヌードル ローリングストック」

これ、めちゃくちゃいいサービスです。
3ヵ月に1回、事前に選んだ9種類のカップヌードルが届くんですから。組み合わせの変更も自由。月々670円(2021年2月現在)。
しかも、初回はカセットコンロ、手鍋と水、ソーラライトなどと収納する特製BOX(リュック付き)まで付いてきます。

普段からカップヌードルを食べる習慣があるご家庭には適したサービスですが、3ヵ月で9個消費するのと数日間カップヌードルを食べ続けるのとでは条件が違います。わたしのようにカップヌードルを食べる習慣がない者にとっては日常のストックをローリングすることも飽きてしまいそうです。
食事の好みや習慣は日々変わるので、「非常食」というカテゴリーだけで備蓄食品を構成するのは持続的ではないと感じるのです。

非常食を常食にする生活

まず、現在の非常食は美味しいです。ひと昔前非常食といえば、カンパン(乾燥した硬いパン)や乾燥芋でした。その後、レトルトカレーやパックご飯、フリーズドライなどの出現で味が格段に向上しています。

一方、非常食の定番だったカップ麺ですが、美味しさを求めたことで賞味期限が短くなっていることにお気づきでしょうか。賞味期限を過ぎたものを食べてみた経験がありますが、商品によってはメーカーの提示通り、味が劣化してしまう印象でした。せっかく食べるのですから、被災したときであっても、品質が保証されている賞味期限・消費期限内に消費すべきだと思います。

ひと昔前の非常食の考え方は3年、5年保管が可能なものを備えることでした。しかし、美味しくて日持ちがするものを「常食」として生活に取り込むことを意識したいと思うのです。

尾西食品

アマノフーズ

非常食の備蓄は「消費」が鍵

限られた収納スペースの中で賞味期限や消費期限内に非常食を持続的に備えておくこと。それは「ローリングストック」の考え方を基本に、普段の生活で食べるものを如何にストックするかという点がポイントです。つまり、日常的に食べているものの「賞味期限を知る」ということです。意外に賞味期限・消費期限が長い食品は多いです。あらためて普段食べている食品の賞味期限を確認してみてください。発見があるはずです。

そして、もう一点重要なことは、「素材に近い食品を備蓄する」ことです。塩分や甘みは後から足すことはできますが、減らすことは難しいです。塩分を減らすことで、美味しかったものの味が変わります。

たとえば、サバ缶であれば、味噌や醤油といった濃い味だけでなく、無塩の缶を混ぜて、それを普段から利用する習慣を付けておくのです。

マンション暮らしの被災生活には、カセットコンロと水は必須

マンションで被災した場合、住めなくなった状態以外は、そのままマンションで被災生活を送ることになります。
例えは悪いかも知れませんが、コロナ禍で自主隔離、自宅療養者が入院患者の人数を上回ったのと同じではないでしょうか。
避難所の収容人数が満員になれば、マンションで被災生活を送ることになります。

電気、水道、ガスなどの供給が止まる場合の備えとして、カセットコンロ、ボンベと水は必須です。ここではそれが備えられていることを大前提としてお話しします。

ボンベと水を節約しながら自主被災生活を送る

実は、マンションで被災すた場合に、備蓄食料以上に大事なのはトイレ問題です。この件は別途お伝えしますので、そちらをご参考になさってください。

それでは、私が実際に備蓄している具体的な食料をお伝えしましょう。

1.パックご飯

白米だけでなく、玄米なども買い揃えると、常食として消費するときに変化が出て飽きないと思います。メーカーも片寄らないようにしながら、好みの味を探すのも消費の楽しみです。

1度に2〜5パック程度を購入し、消費時期がズレるように気を付けています。
チャーハンなどに利用したり、小腹が空いたときに利用することが多いです。

被災時の調理法についてですが、「湯せんで加熱できる」と書いてありますが、パックご飯だけを実際に15分間湯せんをするのは、水やボンベを必要以上に消費するので避けたいです。
ほうじ茶と一緒に煮て「茶がゆ」にするなど、短い時間で加熱する方法を工夫したいです。

フリーズドライのスープや、即席味噌汁で「煮る」のもおすすめです。
後述する「おでん」の汁で温めると一石二鳥になり、更に薄めて煮れば塩分調整も楽にできます。

2.乾麺

茹でるために大量の水を使い、時間がかかりボンベを消費してしまう乾麺は、調理法を把握した上で備蓄したいです。
私がおすすめするのは、そうめんです。少ない水で短時間に茹でられます。スープに追加で入れて茹でることも可能なので、使い勝手がいいと思います。

パスタの災害時の調理法「水漬けパスタ」はかなりおすすめ

水にひたひたに浸す
2〜3時間後この状態

乾燥パスタをひたひたの水に2〜3時間以上浸します。
フライパンに水も一緒に移して、火にかけます。
水が沸騰して、水分が無くなったら茹で上がりです。火にかけている時間は約5分。水もボンベもかなり少ない消費量で済みます。そして味も問題ありません。

【注意点】
「塩」は一切必要ありません。
大量の水でパスタを茹でる際、塩や油をひと差しすることがあると思いますが、この「水漬けパスタ」には一切必要ありません。
パスタソースと合わせて食べることがほとんどだと思いますので、塩分過多にならないためにも、最初は「塩なし」で調理してみてください。

おすすめパスタソース

災害が起こったばかりで先行きが不透明な被災初期におすすめなのが、このパスタソースです。少量で収納場所を取らずしっかりした味わいです。
予想以上に濃い味ですので、多めのパスタに対しても1パックで充分。パスタは塩を使わずに茹でてください。
10パック入っているので、被災初期には活躍すると思います。

3.パン

焼くと美味しくて、賞味期限がすごく長い(1年から1年半)のがこのドイツ発祥のプンパーニッケル。有機全粒ライ麦パンです。
栄養価やオーガニックについて注目されている一方で、このパンの特徴の酸味や見た目を気にする記事を目にします。
ライ麦パンが好きな方は、一度チャレンジすべきです。酸味は加熱することで気にならなくなります。チーズと合わせるとお酒のつまみにもなります。
被災時にはフライパンで熱して表面をカリッとさせて食べたいと思います。

4.おかゆ

そのままでもたべられるおかゆですが、好き嫌いが分かれるかも知れません。

5.お餅

小分けになっている切り餅は、消費しやすい一方で保存に適しています。

6.おでん

被災時に大活躍すると思って期待しているのがこのおでんです。
賞味期限が半年で、温めずにそのままでも食べられます。スープを希釈してパックご飯を煮れば、水やガスボンベの使用量を抑えられます。

なにより、定期的に消費するのが大変楽なのです。
家族で食べるときには具材を足して、ひとり晩酌のお供にも。
スーパー、コンビニ、いろいろ食べ比べてみるのも楽しいですし、日々味の進化を感じられるのも魅力です。

7.缶詰

シーチキンやサバ缶などはできるだけ加工しやすいものをストックに混ぜて備蓄することをお勧めしましたが、加熱しなくても一食分になるもの、例えば調理済みカレー缶は被災生活に変化を与えてくれるでしょう。消費も楽です。

8.お弁当用具材

お子さんには、常温で保存が可能なお弁当用の具材が適しています。
備蓄のポイントは、多く買いすぎないことで、小分けになっているので、外袋が開封済みでも問題ないという点です。加えて、何に付けて食べるかという、一緒に食べる対象も含めて備蓄することが大切です。

まとめ

スーパーやコンビニに溢れる商品の中で、何気なく利用している商品の賞味期限・消費期限をあらためて意識することで、非常のための備蓄ではなく、常用の備蓄を非常用にも転換できるという発想に変えていただければ、持続可能なマンション暮らしにとって理想の食料備蓄が完成すると思います。

その上で、ローリングストックにより、好循環を生み出し維持して行くことが、災害に備えることだと思います。

以下で、あらためて常用で繰り返し購入している食品の持つ非常用性に気付くきっかけにしてください。

非常食 … 災害などの非常事態により、通常の食料の供給が困難になったときのためのもの

保存食 … 長期間の保存に適するように加工・処理した食品

インスタント食品 … 短時間の簡単な調理で食べられるように加工され、保存性を持たせた食品

フリーズドライ食品 … 水やお湯を加えただけで簡単に食べられる食品。ビタミンなどの栄養成分や風味の変化が少なく、長期保存ができる

レトルト食品 … 気密性、遮光性を持つ容器で密閉して加圧加熱殺菌処理した商品。広義では缶詰も含む。長期に保存すると食品の風味を損なうことを完全に抑制できるわけではない

缶詰食品 … 一般に水分が多いものを、長期保存に適するように調理し封をし加熱処理したもの。保存食の一種。

真空包装 … 包装内の酸素を排除することで食品の科学的な変質や微生物による変質を抑制する

チルド食品 … 冷凍食品(生産から消費まで-18℃以下)に対して、食品に最適な温度帯0〜+10℃の温度帯で流通している食品

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